錦琵琶四十周年を迎えて (昭和42年)

小説新潮 昭和42年6月号記事

錦琵琶四十周年記念を迎えて

錦琵琶宗家 水藤錦穣
今年の秋に、私の錦琵琶創成四十周年記念演奏会を開くことになります。誕生は私が恩師永田錦心の遺志を奉じて始めました、十六歳の時であります。
この道の、戦前の華やかさを想いますと、戦後一門はそれこそ苦難の、茨の道でした。近年ようやく復興して参りましたことは、なんとも感慨無量のものがあります。
花を養うも雨、花をちらすも雨……花を散らさぬ程にふれかし……今日も熊野(ゆや)のお稽古です。若い声が流れる、私が生きがいを覚える時であり、わたしのいのちを次代に伝えるときなのです。

[写真] -お久しぶり- 同じ釜の飯

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