Category Archives: びわ師錦穣

びわ師錦穣 第十三話 琵琶修行

水藤家は当主安平(枝水)と安平の実母、そして最近籍を入れたという安平の家内の3人家族だった。二人とも芸能はやらずそういう意味ではまったく市井の人である。ただ義祖母は英語が堪能で、冨美は安平が英会話が流暢に出来る事にも驚い […]

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びわ師錦穣 第十二話 水藤家

「今日から俺の事はおとうさまと呼びなさい」「はい」 「人の前では余計な事は言わず、いつも黙ってなさい、返事はハイだ」「はい」 「家事、手伝いの類いは一切しなくて良い、料理などもってのほかだ、刃物や先の尖ったものには近づい […]

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びわ師錦穣 第十一話 門出

大正14年2月吉日、枝水はタクシーの座席で腕を組みながら考えていた。 琵琶は舐められたら終わりだ。力ずくは俺の最も得意とするところだ。だがしかしこれからは違う、力より革新的な才能がものいう時代になった。大先生永田錦心はそ […]

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コラム① 大衆芸能としての琵琶と琵琶ゴロ

ここで少し本編とは外れるのだが、東京で流行った琵琶楽の歴史と、それにまつわる闇部分である琵琶ゴロに触れておきたい。 琵琶楽の、特に薩摩琵琶は九州薩摩武士の精神修養として受け継がれてきたという歴史がある。琵琶は古来貴人やも […]

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びわ師錦穣 第十話 縁談

母の死により大黒柱を失った中村家の生活は大きく変わらざるを得なかった。とりわけ影響が大きかったのは冨美である。学費が払えないので佐藤高女は続けられない。冨美は小学校時代の担任に相談して高等科に編入出来るよう頼んだ。琵琶も […]

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びわ師錦穣 第九話 死別

一晩経って、地震が未曾有の大災害だということが分かった。特に多くの人々が避難した横網の被服工廠跡地は遺体と瓦礫があふれ、長峰さん一家を含め旧知の多くが帰らぬ人となった。町は本所といわず浅草といわずその惨状を晒し、帝都が復 […]

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びわ師錦穣 第八話 大震災

大正12年9月1日土曜日 この日学校はお休み、冨美は朝から家の二階で琵琶の稽古。母は午後から用事があるというので身支度をしていた、丸髷を結う母くら。 「お義母さん留守番をお願いします、お姉さんたちも頼んだわよ。お母さん仕 […]

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びわ師錦穣 第七話 未来予想図

それからしばらく中村家は平穏な日々が続いた。次兄が逓信省で働き始めたり、妹たちが家事を手伝えるようになったり、賑やかな一家団欒があふれた。長兄清一は禹水という雅号で始めた琵琶指南所が好評で。妹の倭水(冨美)と共同の看板を […]

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[小説 びわ師錦穣] 第六話 野心家

水藤枝水、彼は米国生まれの帰国子女で琵琶は永田錦心の一番弟子榎本芝水門下。斯界に入るやいなや頭角を現し、自らの会”枝水会”を主催する傍ら宗家錦心の金庫番も務める錦心流一水会の中枢人物である。当時冨 […]

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[小説 びわ師錦穣] 第四話 奥伝審査

大正10年、姉たちに混じって琵琶に家事手伝いにいそしむ冨美にもさてそろそろ奥伝審査を受けさせようということになった。本格の師匠方に芸を披露するのはこれが初めてである。

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