Category Archives: びわ師錦穣

[小説 びわ師錦穣] 第五話 応援団

幼い冨美の演ずる琵琶は、もとより本格派の弾手とは比べるべくもなく、歌が弾法がどうこうよりその可愛さでの好評だった。しかし気を良くした父は勤めから帰ると綿密な日割り表に曲目を書き入れ、そのおさらいが済むまでは冨美が遊びに出 […]

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[小説 びわ師錦穣] 第三話 芸能志願

中村の父は勤め人ながら芸事好きで、講談、新内、浪曲、端唄、暇さえあれば子供たちを連れて聞きに行ったし観に行った。その影響もあって子供達も謡い事を好み、中村家はまこと賑やかな家であった。長男の清一は義務教育を終えると商業科 […]

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[小説 びわ師錦穣 ] 第二話 大家族

中村の家は吾妻橋のたもと、大きなビール工場の横にある長屋に年老いた祖母を筆頭に夫婦、兄弟姉妹十一人の総勢14人で住んでいた。それを勤め人の父がが養っている。温和だけが取り柄の父親一人の双肩で支えきれるわけもなく、母親のく […]

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[小説 びわ師錦穣 ] 第一話 夜空に咲く華

ここは本所の吾妻橋。大正四年の川開きの夕暮れ、近くに住む中村夫婦は幼い子供を祖母に預け、残る年上の兄弟姉妹を引き連れて両国の花火見物に出かけた。 道ゆく数多の見物客、雑踏にのまれて歩く隅田の川端はさても黒山の人集り。見渡 […]

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邦楽大河小説「びわ師錦穣」新連載のご挨拶

近代琵琶人の中でおよそ水藤錦穣ほど、有名でありながらその実、謎に包まれている人物はいないでしょう。明治末の琵琶楽全盛時代に生まれ、早世した琵琶界の巨匠永田錦心に新楽器錦を託されながら紆余曲折の後独立、五柱五絃という琵琶ス […]

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[びわ師錦穣 外伝] 流しの天龍親分の話

お読みいただく前に  これは母の藤波から聞いた話を元に構成した小説です。母が琵琶界とかかわりを持つより以前の話であり、このお話には錦穣先生はおろか琵琶も琵琶人も登場しません、その点ご了承下さい。戦後間もない時期の雰囲気を […]

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