[琵琶読本] 絃の締め方

絃の締め方
 薩摩琵琶の弾き方は、押し干すなわち弦を指で締めて音階を作るのであるから左の手の指は音階の製造元である。
 さてその指で弦を締めるには、指を浅くかけるのである。つまり指の先を使うことになる。指を深くかけて関節の辺を使うのはよくない。それは他の部分はしばらく置いて。
 手の指は先の方ほど神経が鋭敏であるが、元へ寄るほど鈍感である。この点から考えても(指)先の方を使わないと微妙な音を出すのに微妙な動きができない。および弾く手によって同じ柱を用いて四の弦から三の弦二の弦と移る場合があるが、その時に自分の指が自分で邪魔になって不自由するからである。しかし神経の感度も同じだし、また不自由も感じない人ならばこれは別問題である。けれども今まで私の知っているのでは指の先端を使わない人で上手な人はいなかった。

薩摩琵琶 中段/下段を弾く時の指の図

中段の手を弾く場合
 それから中段の手を弾く場合は(上から第二番と第三番目の柱の二つを使う手)第二番目の柱を示指(人差し指)で締め、第三番目の柱は無名指(紅さし指/薬指)で押さえるのであるが、この際は人差し指の方で一杯に締めて薬指の方はほんの添えに使うか、または締めるなり押さえるなりにしても極めてわずかな力の入れ方であって決して強く押さえてはいけない。もし人差し指も薬指も同じ力かあるいは薬指の方へ多く力を入れて締めると音はグラグラしたものになるし、柱が早く傷んでサエが悪くなる。しかしながら音のグラグラするのはその人の練習によって免れ得るとしても、柱の早く痛むのはいかにしても免れ難い欠点がある。その上もう一つの損は、大干の柱すなわち第一番目の柱と第二番目の柱との距離が長いだけに人差し指で締める方が力を要せず容易であるが、薬指で締めると力が余計に必要されるだけ、それだけ苦労が多くなるわけである。

下段の手を弾く場合
 下段の手を弾く場合には、薬指と中指との二本で締めるのである。この時は両指協力して締めるのであるが指はやはり(指)先を使うようにして欲しい。
 弦を締める際に、柱の角(柱を締める時に擦れる所)へ指が触らないように心がけねばならない。指が触れると柱が汚れる。汚れると弦を締める時に弦の通りが悪くなって軋む。軋むようでは音階を作ることが不可能になる。しかし初歩のうちは軋むような指の使い方をする。また天候の具合や時候(季節)の具合で軋むことがある。雨天や曇天または湿気の多い時季にはよく軋むものである。

弦の軋むのを直す方法
 この際は、柱の角へ蝋を塗ってあとをよく拭いとる。また蝋石の粉末を塗ってもよろしい。それで直らないときはアルコールで柱の角をよく拭いて、手垢や汗っ気や手脂を除去して、よく乾かした後に蝋か蝋石の粉末を塗ると直る。もちろん糸もひどく汚れていては軋むから右の方法を応用すると良い。

琵琶読本 目次へ

Posted in 琵琶読本

コメントは受け付けていません。